第五回「大脱出」についての書簡禄 その2
監獄≒シュワの現実
かわず:というか
かわず:今回はかなりシュワ本人の実態とかキャリアとかひっくるめて
かわず:ごちゃ混ぜで見る感じになってると
気楽:だって、映画の話今言ったのとまんま同んなじですよ
かわず:ですね
かわず:蓋を開けてみれば『大脱出』は
かわず:出してもらう人=シュワ
かわず:出す人=スタローン
かわず:になってますもんね
気楽:シュワがなんかショボくれてて
気楽:スタローンが来てからやる気出すという
かわず:笑
かわず:でしたね
気楽:だから、そういう意味では脱獄ものとしてもちゃんとできてるんですよ
かわず:出来てたね
気楽:パピヨンとか、ショーシャンクとかでよく言われる
かわず:うん
気楽:刑務所は不自由な人生の比喩だ。いかに苦しい状況から脱出するために頑張るか、それこそが重要なんだという
気楽:結局あの刑務所はシュワのいる現実なんですよ
かわず:うんうん
気楽:ガラス張りだから浮気もできない
かわず:でもそう考えたとき
かわず:スタローンの脱獄のプロになった動機は設定上うまいのでしょうか?
気楽:息子でしたっけ?
かわず:うん
かわず:殺した犯人を一生ぶち込むために脱獄できない刑務所をつくるという
気楽:うーん、脱獄のプロであることと刑務所の設計者であることの関係性っすか?
かわず:そこに犯罪者をぶち込むっていう人が
かわず:自由のために脱出するというよくわからなさはあるよなぁという
気楽:脱獄のプロであるということはここまでの説明から必要性があるし、良いのだけど。なぜ、その設計もしているのかということですよね。
かわず:脱獄物のテーマ性と矛盾しねぇかな、と
気楽:あれが、スタローンの世界だからなのかなぁ(※スタローンの世界…ここではロッキーやランボーなどのように人間的な苦しみを描いた世界くらいの意味。)
気楽:シュワの自意識をスタローンがスタローン的な世界に直し、脱出させ、実はそれは○○○の陰謀だったという
気楽:そういうことでいうとタマフルのスタローン世界に迷い込んだシュワというのは正しそうだな
かわず:なるほど
かわず:その感じはね
かわず:ありますよね
気楽:重要なのは二人が一緒に苦しんだ時間は嘘ではないことですよ。
かわず:そうね
かわず:あの脱獄はすべてスタローンにかかっている感じは
かわず:あの映画がスタローンの世界に属しているということを意味していたけれど
かわず:二人が耐えた懲罰の熱は嘘ではないと
気楽:そうそう、クレバーな人の暗躍もあるけど、そこと熱い経験は別というね。
シュワルツェネッガー人間宣言
かわず:こんなことばっかり言ってると
かわず:シュワの姫感が増してしまうけれども(※姫…BLにおいての姫、王子などの男性同士の役割のこと)
気楽:いや、今回完全にヒロインでしたけどね
気楽:ツンデレだし
かわず:彼はやっぱり彼なりに活躍してましたよ
気楽:デレツンか?
かわず:排水口の蓋とったり
気楽:あ、その辺で言いたいことあるんすよ
かわず:ほう
気楽:タマフルだとシュワが泥かぶってやるかって感じでスタローン界に合わせたことになってますけど
かわず:そうそう
気楽:そうじゃなくて、これはラストスタンドでシュワの人間宣言が上手く行った後の世界ということなんですよ(※人間宣言…ここでは、ポツダム宣言受諾後に神と同列視されていた昭和天皇が「私は人間です」と日本国民に宣言したことでは勿論ない!)
かわず:ごめんちょっと様子見る…笑
気楽:w
気楽:コマンドーの頃のシュワは脱獄ものなんてできないんですよ。
気楽:だって究極生命体であって人間じゃないんだもの
かわず:要はあれかい?
かわず:シュワは今まで
かわず:エクストリームな存在ではなくて
気楽:一番の当たり役が殺人機械
かわず:ラストスタンドで等身大になったと
気楽:そうそう。かろうじてね。
気楽:まあ、その前から人間になろうなろうとはしてたんですけどね
かわず:してたっけ…笑
気楽:シックスデイとか、エンドオブデイズとか、コラテラルダメージとか
かわず:シックスデイは…そうか…笑?
気楽:あれ、だって普通のおっさん役ですよ
かわず:なんか強そうに見えたけどなぁ
気楽:妻を愛する良き夫なのになぜか変な組織に命を狙われる
気楽:なんで?どうして?って話でしょう?
かわず:まぁね
かわず:クローンだったんだっけ?(←ネタバレ注意)
気楽:トゥルーライズも、トータルリコールも、妻を愛する良き夫、けど実は?って話だったじゃないですか
かわず:うん
気楽:要は、前振りにしかならない設定だったんですよ、昔は。
かわず:はぁはぁ(←興奮しているわけではない)
気楽:それを、通常にしようと頑張ってたんでしょう、多分。
気楽:こう、96時間の前のリーアムニーソンみたいな感じにさ…
ラストスタンドとイーストウッド
かわず:あの…
かわず:アーカンソーの田舎の保安官…けど実は…というラストスタンドは
かわず:そう考えると決して人間宣言とは思えないけどな
気楽:昔のシュワに比べたらはるかに人間ですって!
かわず:まぁ…
かわず:まぁねー
気楽:あと、老いをキチンと描いてるのがいいわけですよ
かわず:そうね
かわず:「Old...!」
かわず:の台詞はかなり説得力ありましたね(※『ラストスタンド』にて「この老体にアクションはさすがに堪える…」という意味でシュワが吐き捨てた台詞)
気楽:もうね、辛そうなわけですよ。
かわず:イーストウッドみたいな顔とかしわとか
かわず:息上がりながらの肉弾戦とか
気楽:そうそう。
かわず:まぁぐっと人間らしくなりましたよね
気楽:ラストスタンドでは、シュワのキャラクターを再定義してて
かわず:うんうん
かわず:する必要もあったし
気楽:まず第一に無敵の男では決してない。
第二に、もう役立たずと言われる年寄り
第三にそれでも、若者よりはるかにパワフルな年寄り
てな感じにしたわけです。
かわず:そうね…笑
気楽:特に、第一、第三の描き方にシュワっぽさを出していたのがうまかった
かわず:ほう
気楽:ただ基本的には前にイーストウッドがやってることではある。
気楽:シュワっぽさの例を挙げると
かわず:おう!
かわず:待ってました!
気楽:まず第一の「無敵では無い」のインパクトはシュワとイーストウッドでは全く違うということ。
かわず:うんうん
かわず:イーストウッドは
かわず:リアルっぽくても
かわず:弾丸が当たりにくいぐらいの補正ですかね?
気楽:イーストウッドは強いけどよく死にかけますからね
かわず:死にかけるけど死にはしないぐらいですかね?
気楽:シュワなんてむしろ機械の役の時じゃないと死にませんから。
かわず:逆にか…笑
気楽:宇宙人とガチンコし終わった後も、気だるそうにしてるだけで大した怪我もしてないですからね
かわず:そりゃあ
かわず:無敵じゃなくなったときは驚きますね
気楽:えぇ!そりゃもう。
気楽:シュワルツェネッガーが無敵じゃないなんて世の中嘘っぱちだらけで何にも信用できなくなりますよ
気楽:幼い少年の心に刻まれた立った一つのこの世の真実だったのに
かわず:私の中では
かわず:おもしろ強いおっちゃんでしたね
かわず:ターミネーターは全然見ませんでしたし
気楽:私、親戚一同が集まる中で、みんなでイレイザー見ようと言って嫌な顔されましたよ
気楽:新作で借りてきたからみんな見たいだろうと思って
かわず:笑
かわず:そんな嫌な顔することねぇよなぁ
かわず:となるとそうとう驚かれたわけですね
気楽:他の子たちはイレイザー興味ないみたいだからねぇ〜、学校の怪談にしとこうねぇ〜みたいな感じで処理されました
気楽:そうそう
かわず:学校の怪談かぁ
かわず:流行ったなたしかに
かわず:下敷き持ってたよ
気楽:ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ
気楽:みたいなね
気楽:で、第三の強さの表現なんですけど
気楽:イーストウッドは要するに貫禄なわけですよ
かわず:ふむふむ
気楽:そこをシュワはもうここぞとばかりの力押し
気楽:ラストの格闘戦はほとんど格闘術というよりは機関車やプレス機のよう
かわず:うんうん
気楽:そこにはかつてのシュワの面影があるわけですよ。
かわず:凄かったねぇ
かわず:そうねぇ